門限はないから別に遅く帰っても大丈夫なんだけど。なんか後々怖いんだよね。

「えっと…送ろうか?」
「へ?」
「なんか急いでるみたいだから。俺、チャリだし」

そう、私は徒歩。通学に30分強かかるから非常に有り難いのだけど。ふ、ふ、2人乗り!?

「ほら早く」
「え、あ…はい」

気付けばもう外にいた。促されるまま小日向君の自転車に跨ったはいいが、どこを掴んでいいものやら、私の手は空をさ迷っている。

「腰に、腕回して」

言われて、私は軽く腕を回した。が、走り出して回した腕に力が入る。私、2人乗り苦手みたい。

「うぐ、そんなにきつくしがみつかなくても大丈夫だよ」
「あぁぁ、ごめんなさい」
「その…色々、当たるんだけど」
「?」

あ…もしかして心臓の音とか聞こえてたのかな。仕方ないじゃない。2人乗りは馴れないし、この人はキラキラしてるし。

ドラマの中みたい。夜風もキラキラしてる。私まで、輝いてるような気分。

「着いたぞ」
「…ありがとう」
「おう」
「じゃあまたね」

家に着いて現実に引き戻された。私なんかが輝けるわけない。だって引きこもりだもの。母親を信頼出来ない、悪い子だもの。

自分の事でいっぱいで、何故小日向君が私の家を知ってるのか、考える余裕もなかった。