「じゃあ薺菜は、キスしたいと思った事は…」
「ない、かも」
「薺菜ァ!!全国のモンスターに謝りなさい!!」
「ひぃッ」
「好きでもないのに付き合っちゃ、ダメ」
「そう…だよね。でも、好き、ってよく解らなくて」

嘘。好きになるのが怖いだけ。私を知られるのが怖いだけ。

「う-ん、困ったな。はっきりしない複雑な感情なの」
「ドキドキ、とか?」
「あと、嫉妬でモヤモヤとか喜びでフワフワとか」
「擬音語ばっかだね」
「要するにあれよ、likeとloveの違いよ」

恋人に抱くのはloveだよね。じゃあ、家族は…?家族愛とか言うからloveなのかな。

「あ、やばい。今日塾だった」
「あらら。頑張れー」
「薺菜は帰んないの?」
「うん…も少しここにいる」
「そっか。じゃあまた明日ね」
「ばいばい」

家に、帰りたくなかった。学校は居心地が良すぎるから、足が進まない。

「はぁ……」

一眠りしていこうかな。しばらくうとうと微睡んでいると唐突にドアがガラッと開いた。

げ、小日向君。

「佐倉…?」

あぁ、見ないで下さい。イケメンに見られるとキラキラが突き刺さる。

私の心の葛藤はお構いなしに小日向君が近づいて来た。なんで?私悪い事した?

「何してたの?こんな時間に」
「へ?今、何時?」
「7時弱」
「……う…そ」

ね、寝過ごした-!!