天然彼氏×純粋彼女



「早く並べーっ。卒業式の練習にいくぞーっ。」


先生が大声で叫んでる。

ボーッと廊下を歩く他の組を眺める。


…桑野君は通るのかな?


そう考えて、頭をふる。


なに考えてるんだろ…。


ふと顔を上げた瞬間…


「―――///」


目が合ってしまった。

どうすれば…!?


「りなちゃん!?どしたん!?顔が真っ赤だ」

「あーっ!!//何も聞こえないーっ!!///」



綾香にばれてしまった。

それに、桑野君にお辞儀されちゃったよ~///

は、恥ずかしい…///


「わかった!!好きな人と目が合ったとか?」

「す、好きじゃ…」

「好きじゃないん?じゃあ、嫌い?」


好き?嫌い?


「…わかんない。ねぇ…綾香?」

「何~?」


うち、わかんないや…。

なんで…なんで…。


「なんで目が合うだけでドキドキするの?」

「好きだからじゃないん?」

「…そっか。」



[好きだから。]


好きなの?

でも、好きになれそう。


「桑野君はどんな人?」

「たっくん?めっちゃ優しいよ。優しすぎちゃうけどね。」


よくわかんないけど…。


「…好きかもしれない。」

「えっ!!そうなん!?応援するよ!!」

「ありがとう♪」

「久しぶりに見た♪いきいきしてるりなちゃんの笑顔☆」


うち、ちゃんとOKって返事する。

うちが好きになれば相手が幸せになれるなら…。



家に帰って、家の手伝いをする。


お母さんの助けになれるように…。


家の掃除に、お風呂の用意、晩ごはんの準備、布団の用意…。

勉強は、授業で集中するって決めてる。


家で勉強に時間をさいてたら、家のことがうまくいかないから。


塾だって行けないんだから。


♪~♪♪~


「メールだぁ。」


晩ごはんの野菜炒めを作りながら、携帯を開く。



『はじめまして♪』


・・・また、迷惑メール?


「…はぁ。」


迷惑メールがまた来るなんて…。

まだ、変えたばっかなのになぁ。

でも、読んでみよっかなぁ☆

気になっちゃうし。

受信メールを開いた時、驚いた。


『こんばんは!桑野拓弥です(^_^)v
アドレス、沢村からもらった。
今日、目があったのでビックリしてた(*^_^*)

答え、聞いていい?』



・・・・えっ?

メールが着ちゃった…。

これは…答えなければいけない…よね。


『よろしくお願』


…急いで、自分が書いたことを消した。

なんだか…怖くなった。


…また、裏切られそうで…。


また、捨てられそうで…。


『…怖い…。』



でも…答えなきゃいけない。


話したこともない。


相手のことなにも知らない。


…元彼と同じかもしれない。


でも、わかんないけど…大丈夫な気がする。

前より幸せになれるかもしれない。

…好きになれるかもしれない。

「…バカな考えだけど。」


『よろしくお願いします(*^_^*)』



―――ピッ。


…うちは、貴方の気持ちを大切にしたい。

よろしくお願いします、桑野君。


「りな?まだ、ビーフシチューの味見出来んのん?」


向こうの部屋から、弟が来た。

「ビーフシチュー?…あっ!!忘れてた!!」


鍋の蓋を開けると、ちょうど出来上がっていた。


「どうぞ。どう?」

「美味しい♪」



「じゃあ、並べよっか。お母さん、帰って来たからね♪」

「やったー☆」

「ただいま~。いい臭いするね。」

「龍斗がもう我慢できないって。早く食べよ~、お母さん。」
「わかったよ。」


毎日の、晩ごはんが好き。

本当は、お父さんとお兄ちゃんとも食べたいけど。

だって、うちが作った料理で笑顔に出来るなら。


「りなが作ったビーフシチュー美味しいよ♪」

「よかった♪」


笑顔が大好きだから。

みんなが笑顔になってほしいから。

みんなの笑顔が大好きだから。