私達は新しい教室へ向かう途中、噂を聞いた。
「頭のいい転校生が来るらしい。」
この蓮華学園は成績でクラス分けがされているので、頭がいいならA組に来る可能性がある。
「珍しいね。ココに転校生なんて。」
「だよね。成り上がりか?」
「うはー可哀相に。」
蓮華学園はレベルは高いし歴史もあるし、特待生以外は全員が金持ちで、名門中の名門。
近くに引っ越したという程度では、簡単に入れない。
なにしろかかる金額が半端ではない。
事業に成功した成り上がりの家庭の子供は、見栄や箔付けで親に入れられることもあるが、それはとても稀なのだ。
入った処で、他の高校とは異質な蓮華学園に途中から入って慣れるのは難しい。
「何でもいいけど、かっこいいといいなぁ 。」
美羽が少し上を見ながら言う。
それを聞いて、葵が呆れた顔で応える。
「女かも知れないじゃん。男好き。」
「別にあたしは普通だもん。」
口をとがらせている。
「春休みにも彼氏変わったくせに。この1 年で何人と付き合ったよ?」
「えーっと…」
詰まらせる様子もなく、指を折りながら真面目に数えだした美羽を見て、ため息をつく。
「いや…、いいよ、もう。」
心なしか少しトーンが低い。
私と陽菜は、笑いながら聞いていた。