1年前
君は、俺の前から消えた。
君が遠くの高校を受験したことと、青空育英会を利用しようとしていることは知っていた。
近くの学校を受験した気配がなかったし、
育英会の書類を見つけてしまったから。
でも、それ以上の情報は手に入らなかった。
誰に聞いても、何も知らなかった。
知っている筈の園長も、教えてくれなかった。
君はきっと、二度と俺の前には現れない。
同じ施設内にいながら、数ヶ月の間、俺を見ようともしなかったくらいだ。
もう俺には会いたくないだろう。
それなら、どんな手を使っても捜し出してやる。
そう思った。
今までは、傍にいたから安心できた。
感情を出さなくなった君を見るのは、辛かったけど。
ずっと隣にいた君が離れたのは、寂しがったけれど。
それは全て、自らまいた種が生長した結果で、口に出す権利なんてなかった。
仕方ないと思っていた。
それでも、まさかいなくなるなんて、考えもしなかった。
君がどこかで、独りで泣いているのかと思うと、いたたまれなくなって、
野田夫妻養子の話に、文字通り飛びついた。
園長も俺の気持ちを察してくれて、すぐに連絡してくれた。
なにしろ、俺は養子に入ることを異常な程嫌悪していたから。
いきなり会って家族になれるわけがない。
跡取りだ何だって言ってる奴等も、頭が堅いオッサンだ。
会社内の優秀な人間から選べばいいのに、そうしないのはだだの自己満足でしかない。
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