「生徒に嘘をついたのは?」
「その方が結構楽なんだよ。誕生日は静かに過ごしたいから。」
「……そう。もう、いい?」
嘘と本音の見分けがつかない。
コイツと話すのが、嫌になってきた。
だから、離れる為に言ったのに、翔は別の捉え方をした。
「そうだな。突っ立ったままってのも何だし、帰るか。」
「何言ってんの?私、寮には住んでないよ?」
アンタとは逆方向だから。
「知ってるよ。ウチのマンションだろ?ほら、行くぞ。」
さも当然のように私の手首を引っ張っていく。
「ちょっとっ。離して!」
言ってることは前とは違うのに、態度は相変わらず。
分からない。
翔のことなら、何でも知っているつもりだった。
でも、今私の手をひいているのは誰だろう。
私が知っている翔とは違う気がする。
……全く別人だとは思えないけれど。
どんなに暴れても、腕は翔の手から離れない。
「離して!触らないでよ!」
翔は、私の声を無視して早歩きで歩いていく。
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