車を降りてタワーまで歩く。
もちろん手を繋いで。

それだけでも幸せな気分になれた。

中は…もう夜だというのに意外と人がいる。少し緊張して、あたしは虎の手を強く握った。

虎は小言でそっと言った。

「な、意外と平気だろ?周りはデート中のカップルばっかだし、お互いの事に夢中でオレ達になんて気付かないよ」

「う、うん…」

周りを見渡せば…確かにそうなんだけど、それでもドキドキしてた。

バレてもいいと思う反面───週刊誌にでも撮られて、変なバレ方したら会社にも虎にも迷惑がかかる…

それが怖かった。


たくさんのお客に混じりエレベーターで展望台へと上る。

エレベーターが止まり開いたドアの向こうに……東京の夜景が広がっていた。

あたしはすっかり興奮して、彼の手を引っ張りながら夜景を見に行った。

──綺麗…

キラキラ。光が点滅していて星みたいだ。
それがずっと遠くまで続いている。

星の海。まるで自分達が空に浮かんでるみたいだね…

あたしはすっかり、その光景に見惚れていた。

後ろから虎が、あたしを抱きしめるように立っていた。

あたしは小言で言った。

『ありがと…虎。スゴく嬉しかった』