周りも街灯やビルの灯りで明るいはずなのにタワーだけが輝いて、まるで暗闇に浮かんでいるようだった。

そこだけ別世界。

「そ、東京タワーに行こうよ」

「でも…人がたくさん居るんじゃない?ヤバいんじゃ…」

今まで人目を避けて会う為にホテル直行だった。
触れ合う為には、そうしなければならなかったから…

「平気だろ?そのかわり大声出さないでな、声でバレちゃうかもしれないから…」

「いい…の?」

もちろん夢見てた。
普通に彼とデートする事。
街中で手を繋いで歩く事。

誰に遠慮することもなく…いちゃいちゃしたりすることとか…

多少の制限付きだけど…ごく普通のカップルみたいになれるの…?

「―――うん」

「やったぁ!あたし実は東京タワー初めてなの!」

それが彼と一緒に登れるなんて!
夢みたい…

「初めてなんだ?」

「うん、あたし結構田舎者だから」

芸能界に入ってから東京に来た。だから全然知らないの。高級イタリアンや高級懐石、ブランドショップはいくらでも知っていたし、行っていたけど

こういう基本的な場所には行ったことなかった。

スゴく嬉しくて
楽しみで

到着するまで、ワクワクしていた。