差し出された龍之介を見て、あたしは躊躇した。

だって──もう抱いたりできないと思っていたし…

「で、でも…」

「私、虎之介さんとセリカさんの仲を知って、セリカさんにどう償ったらいいのかわからなくて悩んでました。

そしたら…龍之介はセリカさんが育ててくれてたんです」

「もしかしてそれで…警察に何か言ったの?」

「はい。『龍之介は預かってもらってました』って。さすがに信じませんでしたけど、これくらいしかできなかったから

私──龍之介がセリカさんの元にいた事が奇跡みたいに思えて嬉しくて。

…そうですよね、龍之介は全て知っていてセリカさんの元に行ったのかもしれません。だからセリカさんに抱いてもらいたいんです。

もう一人のママみたいに…」

そう言われて──ドキドキしながら龍之介に触れた。

龍之介はあたしの顔を見てニコッと笑う。

「龍之介…ありがとう…」

あたしは思わず天使を抱きしめた。

初めて会った時も
いとおしくて抱きしめたことを思い出す。

彼の笑顔が──龍之介に許された気がした。

これだけで十分よ。









君に会えて
本当に良かった。

何年経っても
あの頃を思い出すよ…