「不安?」

「考えすぎかもしれないけど。龍之介や琉嘉と別れた後、独りになると思うと…」

「淋しい?」

「…ん。なんか、せっかく手に入れた宝物をなくす…みたいじゃない?もう二度と手に入れられないような…」

なくしたくないもの。失いたくないもの。

今の生活が終わってしまうのが惜しい。

琉嘉とは意見が合わない気もするけど、思った事を言い合える人に初めて出会ったと思った。

この生活が楽しいって思えるようになったし、大事に思う。

でも終わりにしなきゃいけないの?

あたしの傍らで、龍之介を抱いていた鷺沼さんは、眠りについた龍之介の顔を見ながら独り言のように話し始めた。

「僕もね、家族がいた時は思ってたよ。『幸せな時間はいつまでも続く』ってさ。そんな時間は永遠に続くものだと信じてた。だけど…終わってしまった」

「うん…」

「でもさ、それで終わりじゃないんだ」

「?」

「楽しい時間も幸せだと思える瞬間も、またいつか訪れると思うんだ」

「そう…かな。そうなのかな…」

「いつも幸せだと、自分が幸せだって事にきづかないものじゃないか?だから淋しい時間が来ても平気」

「えー?あたしはやっぱりヤだな」