「先生、ありがとうございました!」

岩村さんは先生に深々と頭を下げた。

「いえ、私の力ではありません。美来ちゃんが頑張ったんですよ」

「きっと皆さんの協力もあっての事だと思います。先日はすみませんでした」

礼儀正しい人だな、と思っていると、岩村さんは私の方を見てまた頭を下げた。

「小西さんもありがとう。たまに覗きに来てくれたものね」

「私なんか、ただ様子を見に来ただけですよ!やっぱり美来ちゃんが頑張ったんですよ。それとお母さんもね」

「私、美来がまだ生まれた自覚がないのかもって。だから眠ったままなんだわ…なんて思って、一日に一時間でもいいからって私の心音を聞かせてたの」

「へぇ…」

「お母さんの心音って、胎内で聞いてるハズでしょ?だから『早く生まれておいでー』って話しかけたりして。それが良かったのかしら?!」

「かもしれないですね。お母さんの心音…」



───そうか…!

そうだったんだ!
絶対にそうだ!

私の中に、ある考えが浮かんだ。

「岩村さん、ありがとうございました!」

「え?小西さん?」

私は大慌てで岩村さんの病室を飛び出して屋上へ向かった。

セリカに…電話する為に。