それでも褒められたのは嬉しかった。

その後、何カットか撮り終えて今日の撮影は終わり。

衣装から私服へ着替えに行こうとした時、反対側からこちらへ歩いてくる森島さんに出会った。

まだドキドキしてる…彼の顔を見てさらにドキドキが暴れ出す。

彼はニッコリ笑って挨拶してきた。

「お疲れ様!」

「お、お疲れ様です。今日はありがとうございました」

数時間たった今でも、あたしはぎこちなく言葉を交した。
幸い周りに人は居なかったが

それ以外の言葉はなく少し残念な気がした。

けれど
すれ違いざま、彼は小さな紙切れをあたしの手に握らせた。

「…?!」

小声で彼が言う。

「オレのケータイとメアド。いつでもいいから連絡して?」

それだけ言って振り返りもせず去って行った。

どうしよう!
嬉しくて嬉しくて…今にも走り出したいくらい!

身体中の血がじっとしていられない!


アイドルになるために受けたオーディションに受かった時よりも嬉しくて

今日は人生で最良の日だと思った。


渡された彼の番号とメアドを帰ってすぐに自分のケータイに登録した。

──五番目のメモリー

だけど登録は'000'
大切な人の番号。