あたしが恋した瞬間がこの映画の中に納められる…

だから一生憶えていられる。

あんなに夢見てた大切な初めての恋。まだ…それほど自覚もないけれど。

ただドキドキが止まらない。

   彼が好き

でもこれが人を『好き』だという感情なのか初めてだからわからないの。でも

──胸が苦しい。

それでもこのまま彼に触れていたかった。






「カ―ット!」

監督の声にハッと我に返った。
森島さんは当たり前のようにあたしから離れた。

それが寂しく思えた。

「え!?一発OKですか?」

監督と話をしていた森島さんが驚いて言った。

OKって…あれで!今のなんか…全然できてなかったと思う。
めちゃめちゃテンパって身体もキスもぎこちなかったはずだ。

台詞だってちゃんと言えていたかどうかも疑わしい…

心配であたしも監督に聞いた。

「今のなんかで…平気なんですか?」

すると監督は満足そうに珍しく微笑みながら言った。

「中森さん、俺はキミの表現が良かったと思うんだ。初めての感じがリアルに出来ていたと思ったからね!」

「そ、そうですか?良かった…」


まぁね…
だってすべてがリアルに初めてだったんだもん。