「彼女…いつもあんな感じだったんですか」

「小西さん初めて見たの?」

「はい…少し驚いちゃって」

「そう。暴れるのは毎日の事だったのに、最近は体力も落ちてるからすぐに押さえられるようになったわね。言ってる事もワケわかんないし」

「やっぱり精神的に混乱してるんですかね」

「そうみたいよ」

やっぱりそうなの?

私は確かめたくて聞いていた。
虎之介に違和感を感じた理由を探したかったのだけど…あれが彼女の幻覚や妄想なら仕方ない。

少し納得できなかったけれど、今は彼女を目にした事の方が頭から離れなかった。

痩せ細っていた彼女…多分、きっと食事をとってない。眠れてないだろうし───龍之介を呼ぶ声が忘れられない。



龍之介を返したくなる

いや、まだよ…まだ…まだ終われない

なのにやっぱり私の中で、迷いが生まれた。



一日中、小林仁奈の事が頭から離れなくてその日の仕事を終えた。

着替えて病院から出てから携帯をチェックする。

たくさんの着信履歴…母親の名前にウンザリしながら、それでも電話をかけなおす事はなかった。

今日はセリカから何の連絡もないのね?

こんな日もあるんだと思いながら帰った。