だから彼女を見るのが嫌だったのに、
彼女と関わるのが嫌だったのに…

私はつい、話しかけてしまった。

部屋の中には他に誰もいなかったって事で多少気が緩んでいたのかもしれないけれど。

「今日、森島虎之介…さんは来ないんですか?」

無反応な彼女。
私の声が聞こえているのかな?そう思った時、彼女は身動き一つさせずに答えた。

「わからない…どうせ来たって私に話しかけてなんかこないわよ」

「…え?」

意外にも、彼女はまともに答えた。
それに驚きながらも私は話しかけていた。

「いつもそうなの?子供の事とか何か言ってない?」

「…言ってるわ…早く見つからないと心配だってね。だけど…私への言葉はほとんどないの…当たり前なんだけどね」

「…どういう意味?だって貴女のご主人でしょ?結婚したばかりで…」

「結婚…ね…意味なかったかもしれない」

彼女の言っている言葉の意味がわからない。やっぱり少し精神的におかしいの?

もう少し色々聞き出せたらわかるかも…そう思ったのに、宮川さんが戻ってきてしまった。

そして彼女への質問は終わり。

私達は彼女が大人しくなったのを見届けてから部屋を出ていった。