彼女の部屋のドアをノックしようとしたが、中が騒がしいのに気づいて私達はすぐさま中に入った。

「龍之介を返してよ!貴方達が隠してるんでしょ!!」

そう言って小林仁奈は部屋の物を投げたりして暴れていた。
先に来ていた医師が彼女を止めようとしていた。

「落ち着いてください!森島さん!」

「森島なんて呼ばないで!私、結婚なんてしてない!龍之介ぇ…っ!!」

錯乱したように訳のわからない事を言う彼女に圧倒され、私はただ見ているだけだった。

「小西さん!彼女を押さえて!」

「は、ハイ!」

宮川さんの声にハッとして、私は彼女の身体を押さえようとした。

「!?」

私はビックリした。彼女の身体の細さに。
芸能人だから特別細身の身体って訳ではない。

これは異常かも…

「離してっ!」

「痛っ!!」

私の手を振り払おうとした彼女が爪で私の手を傷つけた。

とっさに手を離し、見るとしっかり引っ掻き傷が出来ていた。少し血もにじんでいる…。

数分後、暴れまくって疲れたのか彼女は大人しくなった。
泣きながらベッドに横になる。


──これが現実…
龍之介の母親は確実に壊れ始めていた。