その日はかなりイライラしていた。

私がこんなにムカついてるなんて珍しい…なんて自分でも思うくらいだった。



午前中、また母親から電話があったから。

しかも何度も。着信履歴が母親でいっぱいになるくらい。
セリカの週刊誌事件でイライラしてるのに拍車をかけるように。

これは嫌がらせ?
この前おばぁちゃん連れて行ってあげたじゃない!

まだ何かあるわけ!?

考えてるだけでムカつきは止まらない。
仕事も少し雑になるし、それがまた余計にイライラさせる。

そして私はとうとう失敗してしまった。



今まで何とか会わないようにって思ってたのに、私は『彼女』を見てしまった…。

同じ病院内なんだし、会わないようにするっていうのに無理がある。

「小西さん!ちょっと来てくれない?!」

「え?あ、ハイ!」

宮川さんに突然声をかけられて私は素直に従った。

「どうしたんですか?」

彼女の後を歩きながら用件を聞いた。宮川さんは困ったように小声で言う。

「'お姫様'がね、今日も暴れだして大変なのよ!」

「!!」

ヤバい!
とっさにそう思ったけど、もう遅かった。
私は迷いながらも諦めて、小林仁奈の部屋へ向かった。