少しだけ、足を止めるのは簡単。
だけど止まった時、周りを見るのは勇気がいる。

あたし、ちゃんと生きてる?
間違った道を歩いてない?
『中森セリカ』として自信とプライドを持って仕事できてる?

周りにどう思われてるか考えると不安だったし、誰かに弱い自分を見せるのに躊躇いがあった。

だから、こんなに自分が脆いなんて思わなかったの…

今になってようやく気づく。自分の事、自分の愚かさ──まだまだ足りないかもしれないけれど

でも少しだけ
自分の中に溶けずにあった氷のような感情が涙と一緒に流れ出る気がしていた。

「ゴメンな?僕の勝手な話しで責めたりして。こういう話しはどうしても許せなくなるんだ。後悔するのも、もうイヤなんだよ…」

「ううん…あたしが悪いんだから、誰かにそう言われても仕方ないってわかってる」

「ホント、ゴメン」

彼は何度も謝り続けていた気がする。
だけど、よく覚えていない。


──ずっと泣き続けてあたしはいつの間にか眠ってしまった。






ずっと夢を見ていたみたい。

あたしはまだ虎之介と一緒にいるの。
あたし達は結婚して…二人の間に生まれた子が龍之介っていう



おかしな夢を…