セリカに言った時間より少し遅くなったけど、別に何もなかったかのようにマンションに帰った。

部屋に入ると龍之介が泣いている。

私が抱き上げるとセリカが顔を出した。

一日、赤ちゃんの面倒を見るのは大変だったろう。彼女は笑顔で答えていたけど、苦労してたのがわかった。

上手く育児が出来ないからって、いちいち責めるつもりもないし…

赤ちゃんの世話なんて初めての経験なんだろうしね。彼女が頑張ってるなら大丈夫。

そう思っていた。

食事をとりながら病院での騒ぎをセリカと話していた。
今後の事も。

とりあえず龍之介はしばらく預かるって事にして、私は早々に布団に入った。

夜中も龍之介が泣いたりするだろうから、時間があれば少しでも寝ておきたい…

そう思っているのに、全然眠れなかった。








あの電話のせいだ…

あれは確かに母親の声だった。

二度と聞くことはないだろうと思っていた嫌いな声。

なのに…電話での短い会話が何度も頭の中で繰り返される。


ほら───また。


『久しぶりね』

「ほ、本当にお母さんなの?いまさら何の用?大体、何で私の番号知ってるのよ!」