「何者って…ただの駅員だよ」

「あたしにとっては赤の他人なのに、秘密を守るっていうの?」

「キミにちゃんとした理由があるみたいだし。想像する限りキミの心情も多少理解できると思う。ただ…」

「なに?」

「赤ん坊を殺してしまったら約束は無効だ。もしそうなったら迷わず警察にキミ達を突き出す」

「…!」

彼の本気な目に、少し怖くなった。
もちろん殺す気なんてないから、そんな風に思う必要もなかったんだけど…

「キミはどうする?」

「どうするって?」

「このまま僕の事は、ほっとくのか…共犯者にするのか」

「何よ、それ」

「サスペンスなんかでよくあるだろ?犯人を知ってしまった友人を殺したり、協力させて逃げられないようにしたり…」

彼は笑いながら冗談っぽく話してた。

到底、本気とは思えないんだけど…彼の言う事にも頷ける。

つまりそういう事?

「…鷺沼さんは協力してくれるって事?」

「キミが希望するなら。まぁ、僕は赤ん坊が心配なだけなんだけど」

「どうしてそんなに赤ちゃんが心配?
そういえば鷺沼さんは子供いるって言ってたじゃない。

奥さんとかいるのにあたしに協力なんか出来るの?」