『彼らだって'親'になったんだ』


頭ではわかっているんだけど、森島夫妻に限っては少し違うように思っていた事を

坂本さんにさりげなく指摘されて自覚した。

彼らだけは、他の夫婦とは違うんじゃないかって思ってた理由はね

彼らの幸せや、子供を授かった事──全てがセリカの犠牲の上に成り立っている気がして、嫌悪感が拭えないから。

セリカの幸せと、セリカが産むはずだった赤ちゃんの命の上で

それでも幸せになろうとする彼らの精神がおかしい気がするし

私にとっては彼らの方が罪深いと思っていたし、心の中は汚い人達なんだって決めつけていた。

それはきっと…変わらない、変えられないと思う。

「まぁ、ね…小西さんも結婚して子供を持てばわかるわよ」

坂本さんの言葉に若干、反発しながら…私は頷くしかなかった。

「表が騒いでるなら裏から出た方がいいわね。マスコミに捕まらないように気をつけて」

「…はい。お疲れさまでした」

「お疲れさま」

私は言われた通り、マスコミに見つからないように裏から出て帰った。

──困った事になった…

マスコミが病院に張り込むようなことにでもなったら、龍之介を返しに来られなくなる!