私は慌ててナースセンターへ駆け込んだ。

「あのっ、外のマスコミは何ですか?!スゴい事になってるんですけど」

一番、事情を知っていそうな坂本さんを捕まえて聞いた。

「もう来てるの?相変わらず情報が早いのね」

「どういう事です?」

「私もさっき聞いたばかりなのよ…森島さんの子供のこと。犯人らしい人から何の連絡もないでしょ?

結局、警察も困ってたらしくて…そしたら森島…虎之介さんサイドが『公表して情報を集める』って言い出したらしいのよ」

「えっ…でも、病院内での失踪ですよ?情報なんか集まりますか?」

「そうよね。でも、もしかするとマスコミが騒ぐのを見て犯人が自首してくるかもしれない…って」

「そんなあり得ないような可能性に賭けるなんて!本気なんですかね!?」

私はつい、興奮して話していた。
坂本さんは私を叱るように、少し厳しい口調で話す。

「それが奇跡に近い確率だって、親なら少しでも可能性のある事に賭けたくなるものよ?

きっと何かせずにはいられないんでしょう。それが『くだらない』事だと思えるの?」


そうピシャリと言われて気づいた。

「い、いえ…」

彼らだって他の親と同じだなんだよね…