予想外の声が、予想外の場所から上がって、皆が一斉に振り返った。

もちろん私も。

見ると…私が担当していた患者さんの赤ちゃんの様子がおかしかった。

「…熱…呼吸困難…!?」

全員が処置しようと動く。

「小西さんは院長呼んで来て!」

「は、はい!」

一番経験の長い坂本さんに指示され、一番経験の浅い私が遣いに出される。

部屋を出ようとした時、坂本さんに腕を掴まれ…私は言われた。

「赤ちゃんが居なくなった事はまだ言わないで。今はこの子の方が急いで処置しなきゃならないから!」

私はコクンと、頷いて院長室まで走った。

居なくなった子より、具合の悪い子の方が今は大事だった。

少し薄情かもしれないけど…皆、今できる事を優先しなきゃならない。

私は走って院長室へ行き、正己に助けを求めた。
もちろん…『院長』として。

「院長!来てください!容体が急変した子がいるんです!」

私の声に正己は部屋を飛び出し処置室へ向かう。

私は大した事も出来ずに、ただ指示された事をして…あとは皆に託すしかなかった。

私が担当していた子なのに!
夕方見た時は元気そうだったのに…!

何故気付かなかったの?!