自分で上手くできないんだもん…言われた通りにするしかない。

でも赤ちゃんはかなりグズっていて、彼でもどうにもできそうにない…そう思っていたのに

彼に抱かせて数分もかからずに赤ちゃんは泣き止みミルクを飲み始めた。

「の…飲んだ…」

「やっぱりお腹はすいてたみたいですね」

「スゴい…扱いに慣れてるの…?」

彼の手慣れた様子に、すっかり感心してしまった。

「まぁ…慣れてるのかな?僕も子供がいますから」

「そう…ありがとう」

安心したのと、自分では上手くできなかった事と…何か悔しくなって、あたしはつい涙を溢してしまった。

「大丈夫…今に上手くなりますよ」

彼はそう言って、あたしの頬に触れ涙を拭った。

「…!あ、えっと…」

ついビックリして彼の顔を見てしまった。

──優しい笑顔…

あぁ、だからこの子も安心したのかも…

そんな事を思ってしまった。

彼はミルクを飲ませながら、あたしに色々アドバイスしてくれた。それから…

「こんな小さい子を連れて出るなんて、どちらまで?」

…ドキンとした。

「えっと…じ、実家に行く所なんですけど、この子が泣いちゃって仕方なく降りたんです」