そんな風に考えると、もう実行する事で頭がいっぱいになった。

ちょっとの間よ

少し苦しんでほしいの。

騙されたからって慰謝料請求するなんて、あたしには意味がない。

それに彼もきちんと収入があるから、慰謝料くらいじゃ反省すらしないよね?

あたしの望みは
彼に本気で反省してほしい。
『悪い事をした』

と、心の底から考えてほしい。

そんな事を考えながら、私は身支度を整えていた。

クセかな?
外出する時はちゃんとメイクしなきゃって思って、いつものように化粧をする。

バカみたい…こんなメイク必要ないのに。

誰が見る訳でもない。仕事ができない芸能人はただの無職よね。

分かっているのにメイクをし、帽子をかぶる。

そうしてフラフラと部屋の外へ出て行った。

──目的地は病院。

それも…あたしが中絶した病院よ!

こんな嫌味な事ってある!?もう二度と行きたくない場所に、小林仁奈は入院し出産した。

皮肉な事に、あの病院なら…場所も知ってるし建物の中も多少わかる。

だけど…他の病院ならこんな事、考えつきもしなかった。

──仕返ししてもいいよって神様が許してくれたのかな…

あたしは病院へと向かった。