──誰か来た…







ドキン・ドキン・ドキン・ドキン・ドキン…

全身の血管が大きく音をたてて血液を運んでいる。

窓の外を見てもセリカの姿はない。

…どうしよう…

今、ここから逃げ出したら…絶対に足音をたててしまう!
絶対、誰かに見つかる!

かと言って…赤ん坊を外に放り出す訳にもいかないし、私が赤ん坊を抱いたまま外に逃げ出す事も出来ない。





   失敗──?



失敗する…?
セリカに偉そうに計画を伝えて

私、赤ん坊を彼女に渡せないまま
目的の一つも達成出来ないまま

誰かに見つかって…失敗するの?




そんなのイヤだ!



こんな事で捕まるのもシャレになんないわ!

私は最悪の事も考えながら…腕を伸ばし龍之介を窓の外へと出した。

誰かが、この場所までやってくる前に

セリカがやって来て龍之介を受け止めてくれれば…

最悪────誰かに見つかりそうになったら龍之介を支えている、この手を離すわ…

下は芝生とはいえ、生まれたばかりの赤ん坊にはかなりの衝撃だろう。



  セリカ…
   セリカ



  セリカ…!!!!




私の目が
近づいてきた人物を捕らえた…