この世で最も
当然のように愛しているハズの肉親を──
産みの親を憎まなければならない苦しみ。

毎日が耐え難い苦痛の日々。

会いたいのに
会いたくない

かまって欲しいのに
声をかけられたくない

十代の私は、その矛盾と闘うのは理解し難かった。
どう解釈していいのかも、妥協する事も知らない。

でも、ただ『嫌い』って言葉だけでは解決できない心の深部。

やがて、その生活は終わりを迎える。

私が高校を卒業した頃、あの女は私を捨てて男と出ていった。

スッキリしたのと同時に、『愛してほしい』と声にならない声を出す事もできなくなった事に悔しさも感じた。

だけど涙は出ず
私が母親を愛してなかったと自覚しただけだった。

やがて私は母親と同じ道をたどっているのだと気付く。

こんなに誰かとのSEXが好きなのは母親譲りなんだわ。

この身体には母親から受け継がれたDNAがある。
私にも、あの女の血が流れているんだ…

私はビールを飲み干し、クスリと笑った。

人の事は言えないわね?あんな風になりたくないと願っていたのに。今の私・よく似てると思わない?

『親の顔が見たい』とは、よく言ったものだわ…