「コンコン」

静まりかえった診察室に響く音。
私はちょっとドキンとし、正己は訪問者を迎える為に立ち上がりドアへ向かった。

「西村くん」

正己の声が聞こえた。

『西村』というのか…どんな人なんだろう?私が色々想像をめぐらす前に彼はカーテンから顔を覗かせた。

「横川さん、ホントにOKなんですか?」

それほど低くない声。覗かせた顔は正己より若くて多分20代後半。短髪で色黒の筋肉のついた身体つき。

私は彼をマジマジと見ていた。

──今夜、この男と…正己に抱かれるのね?
初めて会った彼と…お互い何も知らないのに触れ合うんだ。

考えてみれば、おかしな話しよね。
自分が了承し、望めば知らない男とだって平気でSEXできちゃう。

名前も知らないのに
身体は知ってる。

どんな風にするのか知ってる…

「大丈夫だよ。彼女なんだけど…」

「あぁ、ヨロシク。こういうの初めて?」

「えぇ、まぁ」

「彼女、可愛いね。オジサンにこんな事されちゃって~ダメだよ」

「何だよ?オジサンって俺の事か?」

「そうじゃん」

笑いながら彼は場の雰囲気を和らげる為に色々と話し始めた。