車を降りた二人は、手を繋いで
歩いて行く、角を曲がる手前で
庵は、背を向けたまま
いつものように要に、二度
手を振った。
 
そして角を曲がると
庵は、その場に立ち止まる。
     
エンジンの音が聞こえる。

「イオリ、どうしたの?」

庵は素早く、私の唇を奪い

私は建物の壁に凭れ掛かった。

エンジンの音がどんどん
遠くなり、聞こえなくなる。

息も出来ない程の口付け
履きなれないヒール。
   
私の足元は、ふら付く。 

「イオリ?

 苦しい
 
 でも、止めないで」