「いいの?イオリ」

私の手を、彼は強く握る。

「自慢話に付き合ってる
 時間があるなら
     
 お前と一緒にいたい」

「ありがとう」
     
朱莉に別れを告げて、要の
運転する車の後部座席に
並んで座る二人。

あれから、庵は何も話しては
くれない。
   
黙ったまま、窓の外をずっと
見つめている。

私の事を、一度も見ては
くれない。

ただ、優しく繋いでいてくれる
手から貴方の冷たい体温だけが
伝わってくる。

私は目を閉じて、そっと
庵の肩に垂れた。