「それなのに…」
頭を掻きながら、呟いた先輩は、何かに戸惑っているように見えた。
「それなのに…なぜかお前のことが気になって…頭から離れねぇーんだよ…」
そう言って先輩があたしの瞳をドキンとするぐらいの熱い瞳で見つめた。
見つめられた瞬間。 一瞬…時間が止まった気がした…。
息をすることも忘れてしまうぐらい。胸は激しく波打つ。
「先輩…それって…?」
体が小刻みに震えているのが分かった。先輩は、あたしの瞳をまっすぐ見つめたまま視線を逸らさない。
「俺…お前のこと…好きになったみたいだ…」
う…そ…?今の聞き間違いじゃないですよね?
何も言えないまま固まってるあたしに先輩は「聞いてる?」と顔を覗くように言った。
コクンコクンと何度も頷くあたしの頭をフッと笑った先輩の大きな手の平が優しく撫でた。
空の上には、一本の真っ白な飛行機雲が伸びていた。