少し熱を帯びた風が流れる屋上。

先輩は、あたしに背を向けてもう一度言った。


「だからさ…。よく分かんねぇーけど…。お前のこと…気になるんだよ…」


鳥が頭上を飛んでいき。風があたしの髪をなびかせる。


背を向けているせいで、先輩の表情が分からないよ…。


「せんぱい?」


ドキドキしながら先輩に声をかける。

先輩は、あたしに背を向けたまま空を見上げて静かに話し出した。



「俺さ…アイツのこと、ホント好きだった…」


知ってるよ…。そんなこと…。胸が痛くなるほど知ってるよ…。


「アイツ。俺に何も言わずにアメリカに行ったんだ」


「そうだったんですか…」


先輩は、ずっと空を見上げたまま。まるで遠くにいる優花先輩を思っているように見えた。