半年前。父の転勤でこの街に引っ越す事が決まり、この高校を受験した。

 そして、この街に引っ越して二週間。


両親は共働きで家には夜遅くにならないと誰もいない。

 学校以外にも、あたしの居場所はどこにもなかった。


住み慣れた街が恋しい。

仲良しだった美帆の笑顔が浮かんでは、涙がポロリと零れ落ちた。


「ハァ…。美帆に会いたいな…」


鼻の奥がツーンと痛くなる。


きっと、今頃は美帆と同じ高校に通っていたはずなのに。

転勤で仕方ないと思っていても。心はやはり複雑だった。

「お父さんのバカ」

寂しいよ。どうして転勤になるのよ!?言いようもない怒りと悲しみを感じた。