柚舞がもう居ない


そう分かった瞬間、病室にいるのが辛くなって、病室から出て廊下のソファーに座って涙を流した


慌ただしく動く看護師たち

点滴を付けたまま歩き回っている入院患者たち


柚舞がこの世界から居なくなっても、世界は何一つ変わることはない


柚舞が居なくなって変わるのは、俺たちだけ


いつかは俺たちが、柚舞の事を忘れる日はくるのか…?

柚舞の声を

柚舞の顔を

柚舞の笑顔を

柚舞との思い出を

俺たちが、忘れる日がくるのか…?


そう想っていると、病室のドアがゆっくりと開いて、目に涙を浮かべたおじさんが出てきた


「おじさん…」

「蒼人くん…
これ…」

おじさんは、そう言って俺に白い封筒を渡してきた

「これ…は?」

「あの子が、蒼人くんに書いた手紙だよ…
本当に、いつの間に書いたんだよって感じだよな…」

おじさんは、手紙を見つめながら乾いた声で笑った

「そうですね…」

苦笑いをしながら、おじさんから手紙を受け取る


本当だよ…

あいつ、いつの間に書いたんだよ…