夕方になると、いっせいに鳥が巣に帰るように次々玄関に子供が飛び込んでくる。飛び散らかった靴を最後にキチンと並べているのは、イネである。いいつけられたのでなく、性分がキチンとしているのが好きで、ついつい整理してしまうのである。「ただいま帰りました・・・」「あ~・・・イネ待ってたよ。夕飯作るまで、英代を背負ってて」「はいはい。姉ちゃんの着物のねんねこでしょうね」「そうよ、大丈夫よ、じゃ、頼むわね」
・・・キチンとしている上に、兄弟一オシャレでもあるイネは、ねんねこの柄が変なのが嫌なのである。一番下の妹を背負って、庭に出て、目につけば洗濯をとりこんでたたむ・・・じつに、綺麗にたたむのである。・・・「イネは、いいとこに嫁に行って、きっと重宝がられるよ・・・」「・・・だあね、花代姉さんは、だらしないもんね」「・・なに!」「や~いや~い」「待て!コラ!」
・・・・今、思えば、この頃が、イネにとって一番幸せだったのかもしれない。