「またやってんのかよ…。」
津浪くんが教室に入って来る。それと同時に柚子は花瓶を棚に戻した。
「泰寿…。何で…?今日学校来ないて言ったじゃない…。」
「来たっていいだろ、別に。お前には関係ねぇよ。」
教室には沈黙が走る。
津浪くんの耳についているピアスがキラッと光って、目が合った。
「何でよ…昨日までは彼女だったじゃない。泰寿嘘ついたの…?」
「もう好きじゃねーんだよ。ごちゃごちゃ言ってんじゃねーよ。キモいから。」
柚子はその場にしゃがみこみ泣き始めた。
私はそのすきに猛ダッシュで屋上に行く…。
もう嫌…。
今すぐ死にたい…。
星になって、みんなに綺麗って言ってもらいたいよ…。
顔を伏せたら涙が溢れた。
──「おい!梨麻!」
梨麻と呼ばれたのは何年ぶりだろう。
私の名前なのに、今呼ばれるまで忘れていた。
お前、あんた、カス、みんなそう呼んだ。
私には里加梨麻-サトカリマ-て名前があるのに…。
だから嘘だと思った。
空耳だと思った。
この声が天国からの迎えだったら良いのにって思った。
だからそのまま泣こうとした。
「無視すんなよ。里加梨麻だろ?」
また声が聞こえた。