金色のドアノブに手をかける。

そして、そっとドアを開けた。


──────────

そこは森だった。

「なんかジメジメしてる…。」

葉っぱついてる朝露がキラキラ光ってとても綺麗だ。

もう、あの地獄に行くことはない。


そう思うと今まで焦って通りすぎていた、一瞬一瞬が綺麗に思えた。


「お嬢さん、林檎はいかが?」

どこかで聞いたフレーズ。

私が振り返ると、鼻の高いお婆さんがいた。

「私、あなたを見たことがある…。」


何年前だろう。

この人をお父さんと見たの。

「怖いね。」て言いながら。


白雪姫の中で…。


「それでお嬢さん、林檎はいかが?」

ほら、食って死ね。

とでも言わんばかりに、お婆さんは私に林檎を差し出す。


「いらない。私林檎きらいだから。それに私、白雪姫じゃないの。」

私がそう言うと、お婆さんはそそくさと帰って行った。


「もしかして…。」

一瞬、妙な考えが頭をよぎった。

まあ、そんな非現実的な事あるわけない…。


─ん?
ちょっと待てよ…。

この世界は今までの世界じゃない。
違う世界なんだ。

その違う世界が、物語の世界だとしたら?

私は、今物語の中にいる事になる。