「よーし皆よくがんばったな!でもこれから先も大変だから手を抜くんじゃないぞ!」
5時間に渡る入学テストが終わり、6時間目が始まるまでの10分間休み時間へと突入した。
もうほとんどの男女が友達グループを作っており、クラスのあちこちに甲高い笑い声が聞こえた。
だがそんな中でも一人、ぽつんと席に座って卓上にある問題用紙を眺める女子がいた。
―浅原…ココア?
比亞である。
普通ならそこまで気にもとめないがなぜか、何故か気がかりになったため比亞の方に足をすべらせて行った。
「…浅原さん、友達つくらないの?」
「え…」
問題用紙から愛華の方へと視線を移し、目をきょとんとさせて見る。
まるで"私なんかに話しかけてくるなんて"とでも言うように
「うん…ひ、一人の方が落ち着くから……あの…」
「園原愛華。」
愛華は比亞が何を言いたいのかを見透かしたかのように援助した。
「あ、園原さんは友達…」
「無理に作る必要もないし面倒くさい。それにあんな柄の悪そうなグループに入ろうとも思えない」
隠す気もなく窓の方へと視線を向けながらあっさりと言い放った。
クラスのほとんどの男女が愛華に驚きを隠せない目で見ていた。
比亞はそれに耐え切れず何か言葉をかけようとした瞬間
「よーし、HRはじめっぞー!」
柳が教室の扉を勢いよく開けてそういった。
いや、叫んだといった方がいいのだろうか。
すると皆急いでいすに座り、号令をかけ、6時間目の授業が始まった。
授業はほとんど先生の話だった。
高校の勉強の仕方や行事についてなどで、愛華はすぐ"聞く必要がないもの"として捉えて依頼用の携帯で標的の個人情報を調べ始めた。
・七草加奈(ナナクサ カナ)
・成績は下の中。
・泉下高校1年3組
・拓也が好き
・一人が嫌いで常に誰かと一緒にいる
―七草とかいう奴は大丈夫か。手伝った奴が気になるな…
そう思い再び携帯をいじくり始めた。