「だけど、アユミの気持ち考えたらそんなことできないよ。」

ミユは優しく笑った。

「ハルナは昔からそうだったよね。自分が身を引いちゃうっていうか。優しすぎる。それはとってもいいことだと思う。でも、」

「でも?」

「ハルナが身を引くことで、周りが幸せになるかっていったらそうでもないのよ。アユミちゃんだって、タツヤさんだって、そしてナオさんもね。」

わかってる。

でも、わかってても、一番社内で親しいアユミとそういう関係になってしまうのが怖い。

「アユミちゃんには、洗いざらい、全部話すること。そうすることで、ハルナのアユミちゃんへの誠意が伝われば、きっと許してくれる。ただ、ハルナの中で、ナオさんを選ぶのか、タツヤさんを選ぶのか、結果を出すことが先決だけどね。」

私は長いため息をついた。

「仲のいい友達と同じ人を好きになるっていうのは、珍しいことではないのよ。だって、価値観とか、目線が似てるから仲がいいわけでしょ?同じ男性に興味持つことがあったってちっとも不思議じゃない。ただ、少し不幸な気持ちになるだけ。」

不幸・・・か。

「でも、そういう気持ちも一生続くものではないの。縁があるなしは、どうしようもないことだもの。ふっきれる時がいつか必ず来る。」

ミユもそこで初めて肩をすくめた。

「ミユもそういうことあった?」

静かに聞いてみた。

「あったよ。何度もあった。」

ミユはそう言って笑った。