「それが正直よくわからないんだ。ナオと一緒にいるときは、やっぱりナオに惹かれてるなーって思うし。タツヤと話してると、タツヤのこともっと知りたくなるっていうか。」

「私が思うに。恋人うんぬんの時代は、ただ、一緒にいて楽しいとか、彼のこういう部分が好きとか、その一瞬に対してキュンとなれればそれで構わないんだよね。それ以上望んだ時、恋は終わるの。」

クッキーをかじりながら、ミユの話に聞き入る。

「でさ、結婚相手ってのは、そういうの全く関係ないわけ。」

「関係ない?」

「うん。本当に生涯の伴侶として考えられる相手って、その人のことをもっともっと知りたい。知りたくないこともすべて知りたいの。究極のこと言っちゃえば、その人がどんな風に年をとって死んでいくのか。その人の子供はどんな子なのか。そこまで知りたくなっちゃうの。」

「よくわかんない。その違いが。」

「うーん。だからさ、恋人のうちは、知りたくないことの方が多くない?相手の嫌な部分とか、過去とか、嫌らしい部分とか、かっこよかったはずなのに違ってたりする面とか。そんなの、全くどうでもいいことで、それ以上に知りたいって思える相手が本物。わかる?」

わかったような気がした。

「なんとなく。」

テーブルに目を落とす。

「ここから先はハルナが考えて決めることだから、それ以上は私も言わない。ただ、結婚は急いで結論出しちゃだめ。絶対に、「あー、この人だったんだ」って気づく瞬間があるから。だから、今はナオさんとも、タツヤさんとも、二人ともよーく観察すればいいわ。」

「それって二股みたいにならない?」

「ならないわよ。だって、タツヤさんとは付き合ってないんでしょ?単なるお友達関係。」

「いいのかなぁ。」

「いいのよ。結婚しちゃって、「あー違ってた!」って思うよりは。それに、タツヤさんだって、ナオさんとお付き合いしてるの知ってるんでしょ?もし、ハルナに本気だったら、そんなの関係なしで、きっと何かしかけてくる。」

その言葉になぜだかドキドキした。

何かしかけてくる?