「ここなら、気の済むまで泣いていいよ。泣きな、泣きな。」

ミユは私の手をそっと包んで優しくなでてくれた。

しばらく私は呼吸ができなくなるほどに泣いた。

こんなに泣いたのも何年ぶりだろう。

「はいはい、これで拭いて。」

ミユはハンカチを差し出して言った。

「30過ぎの女は泣いちゃだめなのよ。なんでかわかる?」

「何?」

「お化粧がはげて、笑っちゃう顔になるから。」

思わず泣きながら笑ってしまう。

「思いきり泣ける時代って、ほんと20代まで。美しい涙姿なのよねぇ。そう考えれば、私も20代までにもっと泣いておけばよかった。」

「何訳わかんないこと言ってんの。」

思わずミユに突っ込んだ。

気づいたら、笑ってる自分に少し驚きながら。


「で、ハルナの本心はどこにあるわけ?」

ミユは自分のコーヒーを飲みながら言った。

「本心?」

「そう。ナオさんとタツヤさん。正直どっちが好き?」