どうして、そこまでしてタツヤにお礼がしたいんだろ。

自問自答する。

そう、私はもう一度だけ、タツヤと二人で話をする機会が欲しかった。

アユミと飲みに行った日、どうして私と飲みたいと思ってくれたのか。

病院で私が点滴受けてる時に、つぶやくように言ってた言葉はどういう意味なのか。

このままだったら、胸の奥で何かが燻って、これから間近に迫っている決断に迷いが生じそうだったから。

「フィアンセがいたって、お礼ができないわけないでしょ。人としてそんなの私が許せない。」

私の断固とした言葉に、タツヤもそれ以上言い返す言葉が見つからなかったようだ。

「んじゃ、お言葉に甘えるよ。お礼の内容は、ぜーんぶねーさんに任せるから。また元気になったら連絡ちょうだい。んじゃ、今度こそお大事に。」

「うん、わかった。わざわざ電話ありがとう。」


ありがとう。

本当に『わざわざ』だよね。

貴重な昼休みの時間を割いて、私に電話くれるなんてさ。

タツヤ・・・

生意気だけど、やっぱりいいやつ。


携帯をたたむとすぐに自分のスケジュール帳を開いた。

休日ごとに、「ナオとデート」って書いてあった。

ナオ。

今頃どうしてるんだろう?

私が風邪ひいて倒れたことだって、まだ知らない。

知ってるのは、私の家族とタツヤだけ。