ナオの視線から思わず目をそらす。

「その男性とは、親しい間柄みたいだね。ハルにとって。」

ナオは少し寂しそうに笑った。

へ?

私、何か誤解与えるようなことしゃべった?

「ハルは、その相手とはよく飲みに行くの?」

ここは正直に話した方がよさそう。

「よく行く飲み仲間の一人って感じかな。三つも年下のくせにえらく慣れ慣れしいもんだから、飲み会の場でもよく話してる方だけど、ただそれだけ。小生意気な後輩よ。」

「それって。」

「ん?」

「少し妬けるね。」

ナオは、ほおづえを外して、軽くため息をついた。

「でも、こんなことでいちいち妬いてたらきりながないな。ごめんごめん、話続けて。」

そう言いながら、いつもの優しい笑みをたたえた。

そんなナオの仕草に胸がきゅっと締め付けられる。

なんていうか、いつもナオのちょっとした言動にドキッとさせられる。

こういう色気って、男女ともに生まれつき備わっているものなのかも。

私には全くないよな。そういう色気。

ナオに、こういう色っぽさを感じるたびに、なんだか自分ととてもかけ離れた存在にも感じるわけで。

「こんな私に妬いてくれるんだ。なんだか光栄だな。」

思わず、冗談っぽく返す。

「はは、妬くでしょ、普通。」

ナオは前髪を掻き上げながら苦笑した。

だけど、冗談めかして返した私の言葉に少し安心したようだった。

「で、その男性の名前って?」

「タツヤ・・・くん。」

「タツヤくんか。趣味とかはないの?」

「趣味かぁ・・・。」

そういえば、そういう話はあんまりしたことないな。