「あと、僕からの提案なんですけど。」

「はい?」

「そろそろ敬語やめましょうか。」

おっ。

緊張する提案だ。

「その方がお互いいろんな話ができるし、今僕たちの前にある壁を少しでも薄くしたいから。かまいませんか?」

「は、はい。」

「あはは、まだ堅いって。」

そして二人で笑った。

敬語を外すか・・・。

いきなりは、少し難しいけど、やっていこう。

水口さんとの距離が縮まるなら。

だって、もっと水口さんのこと知りたいって思うから。

「今週の土曜日、空いてますか?じゃなく、空いてる?」

水口さんは照れくさそうに言い直した。

「は、はい。じゃなくて、空いてるよ。」

私も言い直しながらくすぐったい気持ちを抑えた。

「じゃ、前と同じ場所に11時頃でいいかな?」

「あの~、あそこはちょっと落ち着かないんで、よかったら駅前の本屋でもいい?」

「ハルナさんがそれでよければ、そうしよう。あ。」

「?」

「お互いの名前、どう呼び合えばいいかな?ハルナさん、ハルナちゃん?」

そっか。

敬語じゃないのに、ハルナさんは違和感ありすぎだよね。

何から何まで恥ずかしくて新鮮な感じ。

ノボルは・・・「ハル」って呼んでたっけ。

「水口さんが呼びたいように呼んでもらえれば。ちなみに私はなんて呼べばいいかな?」