そして、その夜も水口さんと携帯で話す。

お付き合いを始めてから、忙しいだろう水口さんは、一日おきに電話をくれた。

本当に短い時間だけれど、水口さんの声が聞けるだけで幸せな気持ちになる。

こんなに幸せな気持ちになれるなら、お試し期間なんて設けなくてもいきなり結婚決めちゃえばよかったかなぁ。

なんて、寝る前にいつも思った。


「今日もお仕事忙しかったんですか?」

ふふ。

さすがにまだ敬語。

「あー、今日はちょっと相手方とトラブっちゃって参りました。」

「そうなんですか。解決はしたんですか?」

「とりあえず、時差が邪魔してこれがなかなかで・・・。あ、でも日付変わるまでにありったけのフォローは入れたからたぶん大丈夫。」

水口さんは、笑って言った。

この人にはいつも何かしら余裕を感じる。

私にはない。

なんていうか、大人の男性らしい悠然とした落ち着きっていうか。

「ハルナさんはどうでしたか?何かありました?」

「え、いや・・・」

アユミと明日会って、水口さんとお付き合いしてるってこと報告する話をした。

「そうですか。なんだか照れますね。」

水口さんが少し頬を赤くしながら、頭をかいてる様子が浮かんできて笑えた。

「いいですか?アユミに言っちゃって。」

「かまいませんよ。っていうか、逆にうれしかったりする。」

「え?」

「だって、ハルナさんがちゃんとお友達に僕のこと報告してくれるって、彼氏として認めてくれてるって証拠だから。」

「あはは、証拠って大げさだな、水口さんも。」

「だって、ずっと不安なもんですよ。あれから、電話だけでしか話してないし、ハルナさんも僕もまだほとんどお互いを知らない中で交際を申し込んだんですから。」

「まぁ、そうですけど。」

「少し安心しました。」

水口さんは携帯の向こうで安堵したように笑った。

そういう普段とのギャップが、年甲斐もなくかわいいって思う。