よくわかんない。

私はノボルしか知らないから、そういう男女の駆け引きって経験もない。

若いうちに、もっともっといろんな恋愛しとくべきだったよね。

なんて思っても、後悔先に立たず。

大きく深呼吸をして、水口さんの携帯番号を押していった。


水口さんの携帯が私の耳の奥で鳴っている。

心臓が破裂しそうだった。

こんなにどきどきしたの、中学生の時に、初めて片思いしていた男の子の家に電話したの以来かも。

左手で自分の胸を押さえた。

「はい、水口です。」

1週間前に聞いた、水口さんの少し低音の声が響いた。

「あ、あの・・・」

「ハルナさん?」

水口さんはすぐに聞いてきた。

たったあれだけの言葉で、どうして私ってわかったんだろ。

ものすごく耳のいい人なのかな。

「はい。遅くにすみません。今、大丈夫ですか?」

「いやー、本当にハルナさん?驚いた。もう半分あきらめてたから。」

「え?」

「年甲斐もなく携帯番号なんて渡しちゃって、やっぱ恥ずかしかったなーってあれから後悔してたんです。でも、」

水口さんは携帯の向こうで一呼吸おいて言った。

「めちゃくちゃうれしい。」


ドキン。

それが、私を喜ばせる言葉だったとしても。

1週間前に私が見た水口さんとは違う、なんだか少年みたいなことを言う水口さんに胸がキュンとした。