このまま会話がとぎれてしまうのが残念な気がして、続けてみた。

「将来は海外赴任なんてこともあり得るんですか?」

水口さんは、グラスをテーブルに静かにおいた。

「ん。僕が希望すればそういうこともあるかもしれないな。」

「希望はされないんですか・・・?」

「一人で海外に赴任って、なんだか寂しくない?」

水口さんは、上目づかいで私を見て笑った。

この人は。

女性のツボをしっかり心得てる。

さっきから、その言葉のひとつひとつ、仕草のひとつひとつにドキッとさせられっぱなし。

「今度は僕から質問してもいい?」

「え、はい。」

「今誰かおつきあいしてる人いる?」

あまりに唐突な質問に、一瞬言葉に詰まる。

こういう時って、どう言えばいいんだろ。

20代のときみたいに、明るく「フリーで~す!」なんて言うとひかれそうだし、

かといって、「どう思われます?」って含みをもたせるほど、自分は魔性の女でもないし。

しばらく、考えていると、水口さんは頭をぽりぽりかきながら言った。

「ごめんごめん。レディにそんな質問、不躾だったね。」

「あ、そんな・・・」