お店は小洒落た居酒屋だった。

なぜだか私の隣に水口さんが座った。

水口さんからは、ほんわりといい香りがした。

オーデコロンつけてるんだろうか。

こんなおしゃれな男性、周りにいないから、正直ひいてしまう。

最初は皆で自己紹介。

たわいもない会話から始まり、お酒のペースが進むにつれて、くだけた会話に変わっていった。

若人たちは若人たち同士、上司の悪口や、趣味の話で盛り上がってる。

私は少し距離をおいて、そんな会話を聞いていた。

水口さんも、時折笑って話に参加するものの、保護者的な印象を崩さなかった。

この人って、本当はどんな人なんだろ。

絶対無理って思うけど、そう思えば思うほど、気になってくるもの。

少し話してみようかな。

お酒の勢いもあって、水口さんに話しかけた。

「海外の方と取引があるっておっしゃられてましたけど、もちろん英語ですよね?」

水口さんは、唐突な質問に一瞬目を丸くしたけど、すぐに柔らかい笑顔で私を見た。

柔らかすぎて、一瞬どきっとする。

「ええ、もちろん英語ですよ。」

その声はとても優しかった。

「英語は、学生時代に学ばれていたとか?」

くだらないなーと思いながらも話をつなげる。

「ええ。英文科だったこともあり、学生時代1年間イギリスに留学していました。そのせいで、一流しちゃいましたが、おかげで英語を使う仕事につけたので、いいかな。」

水口さんは、笑いながらビールを飲んだ。

長い指。

切れ長の目が、セクシーだった。