男性は眼鏡を人差し指であげると、会釈をしながら私の前を通り窓際の席に座った。

動揺を隠せないながらも、私も座席に腰を下ろす。

「ほんと、びっくりですよね。帰りもお隣なんて。」

男性は微笑んだ。

「こんなこともあるんですね。」

私も笑った。

なんだか久しぶりに胸のあたりがほっこりと温かい。

男性は、優しい声で聞いてきた。

「いい旅でしたか?」

私ははっきりと答えた。

「ええ、とても。」



幸せな気持ちも、辛い気持ちも、全て消化できた先に本当の出会いが待ってるような気がした。

今は失ったものより、得たものの方がたくさんあったと思える。

人生、何が起こるかわからないからおもしろい。

結婚相手もタイミング。

自然に身を任せていれば、訪れる巡り合わせ。

いつか私もきっと・・・


「通路側がお好きなんですね。僕はいつも窓際取るんですけど。」

「はい、断然通路側です。通路の方がすぐ立てるし、気分的に落ち着くんです。」

「そうですか。今日は終着駅まで乗られますか?」

「はい。」

「僕もです。あの・・・着くまで先も長いですし、もしよかったら、お名前教えて頂けませんか?」

「あ、はい・・・私、三浦ハルナです。あなたは?」

「僕は、」


そして、新幹線はゆっくりと走り始めた。