その日の晩は、案の定なかなか寝付けなかった。

色んな思いが頭をよぎる。

突然、タツヤを尋ねていくなんて、どう考えても無茶な話だもんね。

きっとタツヤも面食らうはずだし、そういうことされて嫌な気持ちになったりしないだろうか?

最初に何て言おう。

「元気?」

なんて月並みな挨拶でいい?

突然現れて「元気?」なんて、何考えてるの?なんて思われやしないかしら。

どういう風に話を切り出せばいい?

少し歩こうか?とか促してみる?

はぁ・・・。

考えれば考えるほどパニックになりそう。

それ以前に、タツヤに会えるかどうかさえも怪しいのに。

とにかく寝なくちゃ!

30過ぎると、寝不足はお肌に大敵なのよ。

明日、タツヤに会うのに、目の下にクマ作っていってどうするの!


でも、寝ようとすればするほど、時計の秒針の音が妙に部屋に響いて、時間だけが無駄に過ぎていく。

無駄に過ぎるくらいなら、本でも読もうと、持ってきた単行本をバッグから取り出した。

ベッド脇の電気をつけて、本を開く。

当然、頭には何も入ってこない。

さっきから一ページも進んでないじゃない!

ため息をつきながら、小説の文字をぼんやりと眺めていたら、いつのまにか寝てしまっていた。